
WHILLも格好いいんだけどさ、うちの田舎の親父が『近所の人が乗ってる、スズキのアレがいい』って言うんだよ。カゴが大きいやつ。WHILLじゃダメなのかな?

なるほど、『アレ』ですね(笑)。いわゆるハンドル形の電動車椅子です。確かにWHILLは革新的ですが、日本の道路事情に合わせて進化してきた『王道シニアカー』にも、WHILLにはない素晴らしいメリットが沢山あります。両者の違いを正しく理解しないと、買ってから後悔しますよ!
当研究所では、次世代モビリティ「WHILL」を推奨していますが、すべてのシニアにとってWHILLが最適解とは限りません。
特に、郊外での生活や、荷物をたくさん運びたい場合には、昔ながらの「シニアカー」の方が便利なケースも多々あります。
この記事では、WHILLと、国内シェアNo.1を誇る王道シニアカー「スズキ セニアカー」を比較し、それぞれのメリット・デメリットを解説します。
そもそも「シニアカー(セニアカー)」とは何か?(基礎知識)

まずは、言葉の定義をはっきりさせておきましょう。
法律上の定義は「歩行者」
WHILLも、スズキのシニアカーも、道路交通法上は同じ
「電動車椅子」というカテゴリーに分類されます。
警察庁の定義によると、以下の条件を満たすものが該当します。
- 免許不要:
運転免許証は必要ありません。 - 歩行者扱い:
歩道を走行します。最高速度は時速6km(大人の早歩き程度)しか出ない構造になっています。 - サイズ制限:
長さ120cm以下、幅70cm以下、高さ120cm以下(ヘッドサポート除く)と定められています。
呼び方の違い(豆知識)
一般的に「シニアカー」や「電動カート」と呼ばれますが、よく耳にする「セニアカー」は、実はスズキ株式会社の登録商標です。
宅配便のことを「宅急便(ヤマト運輸の商標)」と呼ぶのと同じですね。
それだけスズキのシェアが圧倒的だということです。
WHILLにはない魅力!「王道シニアカー」を選ぶ3つのメリット

では、WHILLと比較した際、従来型のシニアカーにはどんな強みがあるのでしょうか?
メリット1:圧倒的な「積載能力」(大きな前カゴ)
これが最大の特長です。
WHILLのカゴ(オプション)は足元にあり、容量は限られます。
一方、王道シニアカーは自転車のような大きな「前カゴ」が標準装備されています(例:スズキET4Dは約25Lの大容量)。
スーパーの買い物袋を複数入れたり、農作業の道具を積んだりと、実用性は抜群です。
メリット2:質実剛健な「安定感・頑丈さ」
WHILLが軽量・コンパクトさを追求しているのに対し、王道シニアカーは車体が大きく重く作られています(WHILLの倍近い重量があります)。
そのため、走行時のどっしりとした安定感があります。
多少の砂利道や、畑のあぜ道のような未舗装路でも安心して走れるモデルが多いです。
メリット3:親世代の「安心感・馴染み深さ」
「いかにも最新ロボット」というWHILLのデザインに抵抗感を持つ高齢者も少なくありません。
見慣れたスクーター型の方が、「これなら乗れそう」「近所の人と同じだから恥ずかしくない」と心理的なハードルが低くなるケースがあります。
購入前に知っておくべき「王道シニアカー」のデメリット・注意点

メリットばかりではありません。
WHILLと比較した際のデメリットもしっかり理解しておきましょう。
デメリット1:とにかく大きくて重い(持ち運び不可)
WHILL Model C2は約52kgで、分解して車のトランクに積むことができます。
しかし、王道シニアカーはバッテリー込みで100kgを超えます。
絶対に持ち上がりませんし、普通の乗用車には載りません。
「車で遠出して、現地で乗る」という使い方は不可能です。
デメリット2:保管場所に広いスペースが必要
車体が大きいため(全長約1.2m)、玄関の中に入れるのはほぼ不可能です。
一軒家のガレージや、屋根付きの広い駐輪場など、雨に濡れない保管場所が必須になります。
マンションでの運用はハードルが高いです。
デメリット3:小回りが効かない
WHILLはその場で回転できるほど小回りが効きますが、王道シニアカーは最小回転半径が約1.45m〜1.5mほどあります。
狭いスーパーの通路や、エレベーターの中での方向転換は苦手です。
スズキ セニアカー vs WHILL スペック比較表
国内シェアNo.1のスズキ現行代表モデルと、WHILLの主力モデルをスペックで比較してみましょう。
| 項目 | スズキ セニアカー ET4D | WHILL Model C2 |
|---|---|---|
| 価格(非課税) | 418,000円 | 487,000円〜 |
| 連続走行距離 | 約33km | 18km |
| 最小回転半径 | 1.45m | 0.76m(圧倒的) |
| 重量(バッテリー込) | 約100kg | 約52kg |
| 前カゴ | 大型標準装備 (約25L) | 小型オプション |
| 持ち運び(車載) | 不可 | 可(分解要) |
※価格やスペックは2025年12月時点の各社公式サイト掲載値です。地域により価格が異なる場合があります。
国内シェアNo.1「スズキ セニアカー」の特徴
スズキ セニアカー ET4D(シェアNo.1の絶対王者)

「シニアカーといえばスズキ」と言われるほどのド定番モデルです。
最大の特徴は、「右に曲がります」「バックします」などの
音声案内機能が充実している点。
視覚だけでなく聴覚でも安全をサポートしてくれます。
また、全国のスズキ自動車販売店でメンテナンスが受けられる販売網の広さは、他社にはない圧倒的な安心感です。
失敗しない選び方:あなた(の親)はどっち向き?

結局、WHILLと王道シニアカー、どちらを選べば良いのでしょうか?簡単なフローチャートで整理します。
WHILL(Model C2/S) が向いている人
- 住環境: 都会のマンション、エレベーターを使う。玄関が狭い。
- 用途: 近所の散歩や通院がメイン。買い物は少量。
- 重視する点: デザイン、小回り、車に積んで出かけたい。
王道シニアカー(スズキ) が向いている人
- 住環境: 郊外や地方の一軒家。ガレージや広い保管場所がある。
- 用途: スーパーでのまとめ買い、畑仕事、未舗装路の走行。
- 重視する点: 荷物をたくさん積みたい、安定感、見慣れたデザイン。

なるほど…。うちの親父は田舎の一軒家で、畑にも行きたいって言ってるから、やっぱりスズキのセニアカーの方が合ってるかもしれないな。

その可能性が高いですね!「最新だから良い」のではなく、「使う人の生活環境に合っているか」が最も重要です。
よくある質問(FAQ)
シニアカー導入時によくある疑問をまとめました。
Q1:介護保険は使えますか?
A:はい、条件を満たせば使えます。
「要介護2以上」の認定を受けている場合、ケアマネジャーが必要性(歩行困難など)を認めれば、月額レンタル料金の1割〜3割負担で利用できます(WHILLも同様です)。
まずは担当のケアマネジャーに相談してください。
Q2:雨の日も乗れますか?
A:基本的にはおすすめしません。
各社の取扱説明書でも、雨天時の走行は避けるよう記載されています。
生活防水機能はありますが、故障の原因になるほか、視界が悪くなり、スリップや転倒の危険性も高まるため、安全のために雨の日の利用は控えましょう。
Q3:バッテリーの寿命はどれくらいですか?
A:使い方によりますが、一般的に2年〜4年程度と言われています。
スマートフォンと同じで、充放電を繰り返すと徐々に劣化します。
走行距離が短くなってきたと感じたら交換時期です。
購入の場合は交換費用(数万円)がかかりますが、介護保険レンタルの場合は、通常は事業者が無償で交換してくれます。
まとめ:用途に合わなければ「ただの置物」になる
WHILLも王道シニアカーも、決して安い買い物ではありません。
親御さんの生活環境(坂道の有無、保管場所、用途)に合わなければ、すぐに乗らなくなり、高価な置物になってしまいます。
- まずは親の「一番の目的(買い物?散歩?畑?)」を確認する。
- 保管場所の広さを測る(WHILLとシニアカーでは倍近く違います)。
- 必ず両方のタイプを「試乗(レンタル)」して、自宅周辺を走ってみる。
焦って購入せず、じっくり比較検討して、親御さんのセカンドライフに最適な相棒を見つけてあげてください。
「時速6kmでは遅すぎる」と感じる方は、
時速20kmまで出せる特定小型原付も検討の価値ありです。

💡 ワンポイント:雨の日や重い荷物はどうする?
新しい乗り物を手に入れても、悪天候の日は外出が億劫になるもの。そんな時は、無理せず便利な宅配サービスを頼りましょう。

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