
WHILLのモデルは決まった。親父も『これなら乗ってみてもいいか』と言ってくれた。よし、早速注文だ!

ちょっと待ったぁ!パパさん、それは非常に危険な賭けです。WHILLは決して安い買い物ではありません。数十万円もする乗り物を、一度も乗らずに買うなんて、サイズも履き心地も確かめずに高級な革靴を買うようなものですよ!
前回の記事で、WHILLの全モデルを比較し、親御さんに最適な一台の目星は付いたと思います。
しかし、そこで安心してはいけません。
WHILLの導入を成功させるための最も重要なプロセス、それが「実機での試乗・レンタル」です。
この記事では、なぜ購入前の「お試し」が不可欠なのか、その理由と、無料で試乗できる場所、有料レンタルの具体的な利用方法、そして「ただ乗るだけ」で終わらせないためのプロ視点でのチェックポイントを徹底解説します。
1. なぜWHILLはいきなり買ってはいけないのか?(リスク回避)

WHILLは「家電」ではなく「乗り物」です。
カタログスペックだけでは分からない要素がたくさんあります。
いきなり購入するリスクを理解しましょう。
カタログスペックと「体感」のズレ
「回転半径76cmで小回りが利く」とカタログに書いてあっても、実際に狭い自宅の廊下でスムーズに曲がれるかは、乗ってみないと分かりません。
「5cmの段差を乗り越えられる」という性能も、乗っている本人がその時の衝撃や揺れを「怖い」と感じてしまえば、その機能は使われないままになります。
操作レバー(ジョイスティック)の感度、シートの座り心地、走行時の視線の高さなど、身体感覚に関わる部分は、本人が体験して初めて「合う・合わない」が判断できるのです。
利用環境とのマッチング
WHILLは、基本的に屋外の歩道を走行します。
しかし、歩道の状況は千差万別です。
- 自宅前の道路の舗装状況(ガタガタしていないか?)
- よく行くスーパーまでの道のりにある坂道の勾配
- 横断歩道と歩道の境目にある段差の高さ
これらの「実際の利用環境」でWHILLが問題なく走行できるか、そして本人が安心して操作できるかは、現地で試してみなければ保証できません。
親本人の「納得感」が最重要
これが最も大きな理由です。
どんなに高性能で便利な乗り物でも、使う本人が「乗りたくない」「怖い」「恥ずかしい」と感じてしまえば、高いお金を出して買ってもすぐに物置の肥やしになってしまいます。
試乗を通じて、「これなら自分でも簡単に操作できる」「思っていたより快適だ」「これがあれば、また一人で買い物に行けるかもしれない」というポジティブな実感を親自身が持つこと。
それが、免許返納後の新しい生活へスムーズに移行するための鍵なのです。
2. 無料で気軽に!「試乗」の方法と場所

まずは、費用をかけずに短時間で試せる「無料試乗」から始めましょう。
全国の自動車ディーラーで試乗
意外かもしれませんが、現在、全国の多くの自動車ディーラーがWHILLの取り扱いを始めています。
- 主な取り扱いディーラー:
トヨタ、ホンダ、日産などの一部店舗 - メリット:
- 自宅から近い店舗で、気軽に試せる。
- 普段から付き合いのあるディーラーなら、相談しやすい。
- 車の点検のついでなどに、親を連れ出しやすい。
- 利用方法:
事前に電話で「WHILLの試乗はできますか?」と問い合わせ、予約を入れるのが確実です。
WHILL公式ショールーム・イベント
WHILL社が直営するショールームや、各地で開催される試乗会イベントもおすすめです。
- 場所:
東京(丸の内など)の常設ショールームや、全国の商業施設などで不定期に開催されるイベント。 - メリット:
- 専門のスタッフから詳しい説明を聞ける。
- 全モデルが揃っていることが多く、乗り比べができる。
- 広いスペースで、安心して操作の練習ができる。
- 利用方法:
WHILL公式サイトの「試乗予約」ページから、近くのショールームやイベントを探して予約します。
3. じっくり自宅で!「レンタル」の2つの方法

無料試乗で感触が良かったら、次は有料のレンタルサービスを利用して、自宅周辺で数日間〜1ヶ月程度じっくり試してみましょう。
これには2つの方法があります。
【方法1】介護保険を利用したレンタル(要介護認定者向け)
親御さんが「要介護認定」を受けている場合、介護保険を利用して非常に安価にレンタルできる可能性があります。
- 対象:
原則として「要介護2」以上の方。(※要支援や要介護1でも、医師の意見書などがあれば例外的に認められる場合があります) - 費用目安:
月額2,000円〜4,000円程度(1割負担の場合)。 - メリット:
圧倒的に費用が安い。ケアマネジャーや福祉用具専門相談員がサポートしてくれる。 - デメリット:
介護認定の手続きが必要。取り扱い事業所によっては、希望するWHILLのモデル(特に最新モデル)が選べない場合がある。 - 利用方法:
担当のケアマネジャーに「WHILLを介護保険でレンタルしたい」と相談してください。
【方法2】一般向けレンタルサービス(誰でも利用可能)
介護認定を受けていない元気な方でも、全額自己負担でレンタルできるサービスがあります。
- 対象:
誰でも利用可能。 - 主なサービス:
- kikito(キキト) by ドコモ:
- ドコモが運営する家電レンタルサービス。Model C2やModel Fを、数日間から月単位で手軽にレンタルできます。
- 気に入れば、レンタル品をそのまま買い取ることも可能です。
- WHILL公式レンタル:
- WHILL社が提供する公式サービス。月額制のサブスクリプションプランや、購入前提のお試しプランなどがあります。
- 万が一の盗難や破損に対する補償サービスも充実しています。
- ダスキンヘルスレントなどの福祉用具レンタル事業者:
- 介護保険外の「自費レンタル」としてWHILLを取り扱っている店舗があります。
- kikito(キキト) by ドコモ:
- 費用目安:
月額15,000円〜30,000円程度。(サービスやモデル、期間によって異なります) - メリット:
手続きが簡単で、すぐに利用開始できる。最新モデルも選びやすい。 - デメリット:
介護保険レンタルに比べると費用が高い。
4. 試乗・レンタル時の必須チェックリスト(受入テスト項目)

せっかく実機を借りても、ただ漫然と乗っているだけでは意味がありません。
購入後のトラブルを防ぐため、以下のポイントをリスト化して、必ずチェックしましょう。
操作・走行性能のテスト
- [ ] ジョイスティック(ハンドル)の操作感:
親本人が直感的に操作できるか?反応が敏感すぎたり、鈍すぎたりしないか? - [ ] 速度設定:
最高速度(最大6km/h)を調整し、親が安心して走れる速度を見つけられるか? - [ ] 坂道発進・停止:
自宅周辺の坂道で、スムーズに発進・停止ができるか?ずり落ちたりしないか? - [ ] 段差乗り越え:
歩道の縁石など、よく通る場所の段差を問題なく乗り越えられるか?その時の衝撃は許容範囲か? - [ ] 小回り性能:
エレベーター、スーパーの通路、自宅の玄関前など、狭い場所でスムーズに方向転換できるか?
使い勝手・運用のテスト
- [ ] 乗り降りのしやすさ:
アームレスト(ひじ掛け)を跳ね上げて、スムーズに乗り降りできるか?(特にModel C2) - [ ] 保管場所:
予定していた場所に無理なく収まるか?動線の邪魔にならないか? - [ ] 充電作業:
バッテリーの取り外しや充電ケーブルの接続を、親が一人で簡単にできるか? - [ ] (Model Fの場合)折りたたみと持ち運び:
実際に折りたたんでみて、車のトランクへの積み下ろしが無理なくできるか?(重量約27kgの確認)
ユーザー(親)の受容性テスト
- [ ] 乗り心地:
シートの硬さや背もたれの角度は快適か?長時間座っていても疲れないか? - [ ] 安心感・恐怖感:
走行中に不安そうな表情をしていないか?「怖い」と言っていないか? - [ ] デザインの好み:
見た目を気に入っているか?「これなら乗って出かけたい」という意欲が見られるか?
5. まとめ
WHILLの導入において、試乗・レンタルは「失敗しないための保険」であり、親が新しい移動手段を受け入れるための「助走期間」でもあります。
- まずは無料試乗で、操作感と親の反応をチェック。
- 次に有料レンタルで、自宅周辺での実用性をじっくり検証。
- チェックリストを使って、購入後の懸念点をすべて解消する。
このプロセスを経ることで、「買って後悔した」という最悪の事態を避け、親も家族も納得してWHILLのある生活をスタートできるようになります。

なるほど…。危うく勢いでポチるところだったよ。
まずは週末に、近くのトヨタのディーラーで試乗予約をしてみる。親父が気に入ったら、次はkikitoで1ヶ月レンタルして、家の周りを徹底的にテストしてみるよ!

素晴らしい判断です!その慎重さが、結果的に一番の近道になりますよ。焦らず、お父様のペースに合わせて進めていきましょう。スモビラボは、そんなパパさんの親孝行を全力で応援しています!
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